特定の国の規制が及ぶところで証券を発行する場合は,その国の証券関係諸法に従って諸手続を取らなければならないが,ユーロ市場では,そのような規制は存在しない。
さらに,ユーロ市場では,資金調達の対象となる投資家も特定の国に限定されず,ユーロ市場で取引をしている世界の大手金融機関を通じて,国際的に投資者を募集することができる。
このようなことから,国際金融市場において信用度の高い企業であれば,簡単な手続で自由にユーロボンド債を発行し,資金調達をすることができるのである。
つまり,資金や取引に対する緩やかな規制とそこに集まる資金を取り扱う金融機関の存在によって,ユーロボンド市場は巨大でグローバルな市場に発展してきたのである。
その他の有価証券であるが,「物の流通に関わる有価証券」,「デリバティブ」,「証券化関連商品」をとりあげる。
いわゆる単なる有価証券から派生して,現代社会が複雑に,そして技術的につくりあげたものを紹介する。
これらを理解することがこれからの企業家にとって重大な知識となる。
すでに見てきたように,有価証券は権利を証券と結合させることによって,権利の移転を簡易化するものであり,手形・小切手は金銭債権を表章し,鞭転流通することを可能にした。
一方で,流通する「物」に対する権利を証券と結合して,その移転を簡易化した有価証券もある。
運送中の物品に対する権利を表章する運送証券,倉庫に寄託された物品に対する権利を表章する倉庫証券である。
それでは,これらの物の流通に関わる有価証券について述べる。
なお,今後紹介する証券の性質をまとめてある。
運送証券の意義は,運送中の物品を譲渡したりこれに担保権を設定したりすることを可能にすることにある。
運送証券には,陸上運送で用いられる貨物引換証,海上運送で用いられる船荷証券がある。
航空運送においては航空運送状が用いられるがこれは有価証券ではない。
複合運送においては複合運送証券が利用されるが,法の規定を欠くため内容や効力について問題がある。
また,特に国内運送においては,貨物引換証,船荷証券ともにほとんど利用されないのが実状である。
貨物引換証は,運送人が運送品の受領を認証し,かつ目的地における運送品の引渡請求権を表章した有価証券である。
運送人は荷送人の請求があれば貨物引換証を作成しなければならない(商571条)。
(a)有価証券性貨物引換証は法律上当然の指図証券とされ(商574条),裏書により譲渡される。
貨物引換証は手形とは異なり証券の作成前から権利が存在するが(非設権証券),証券作成後は運送品の処分は貨物引換証によることを要するとともに(処分証券性,商573条),貨物引換証と引換えでなければ運送品の引渡を請求できない(受戻証券性,商584条)。
(b)債権的効力貨物引換証が作成された場合には,運送人と所持人の間では,運送に関する事項は貨物引換証の記載による(商572条)。
これを貨物引換証の債権的効力,または文言証券性という。
しかし,一般に,貨物引換証は手形とは異なり,要因証券(原因関係の変動や消滅によって証券上に表章されている権利も変動・消滅する)であると解されていることから(たとえば運送契約が制限能力のため取り消された場合には貨物引換証も無効となる),原因関係となる運送契約が存在していない(運送品を受け取っていない)のに発行された貨物引換証(空券)や,実際の運送品と貨物引換証記載の運送品が異なっていた場合(品違い)の扱いが問題になる。
判例は,空券の場合にはこれを無効とし(大判大2.7.28民録19.668等、大判昭13.12.27民集17.2848)。
品違いの場合は,倉庫証券の事例ではあるが,証券上の文言どおりの引渡請求権を認めた(大判昭11.2.121物の流通に関わる有価証券227民集15.357)。
学説は分かれているが,近時では,証券の要因性・文言性という観点からだけの検討ではなく,証券発行に基づく責任はいかにあるべきかという観点から債権的効力を考えるべきであり,証券発行者はその無過失を立証しない限り責任を免れず,証券所持人の信頼利益を賠償すべきである,との見解が有力となりつつある。
(c)物権的効力貨物引換証は本来,運送品引渡請求権という債権を表章する有価証券であるが,運送品の処分に関しては,証券の引渡が運送品の引渡と同一の効力を有する(商575条)。これを貨物引換証の物権的効力という。
つまり,証券の引渡によって動産取得の対抗要件を具備し(民178条),運送品への質権設定も証券の引渡で効力を生じる(民344条)。
ただし,運送人が運送品の占有を失った場合の扱いについては,物権的効力の理論構成によって結論が異なる。物権的効力を民法が定める引渡(民182条〜184条)とは別の特別の占有移転方法と解する立場(絶対説)に立てば,この場合でもなお証券の所持人は引渡を受けたことになるが,物権的効力を,証券所持人は運送品引渡請求権に基づき間接占有を取得するにすぎないと解する立場(相対説)によれば,この場合には証券の所持人は引渡を受けたことにはならない(民181条.204条参照)。
ただし,いずれにせよ運送品の現物を即時取得(民192条)した者があるときには,証券所持人は保護されない。
船荷証券は,海上運送人が運送品の受取または船積の事実を証し,かつ指定港においてこれと引換えに運送品を引き渡すことを約する有価証券である。
傭船者または荷送人の請求があれば,船長または海上運送人の代理人は船荷証券を遅滞なく交付しなければならない(商767条.768条,国際海運6条)。
ただし,実務ではもっぱら海上運送人の営業所または海運代理店において発行される。
船荷証券は,陸上運送における貨物引換証にあたり,有価証券としての基本的な性質は両者で異ならない。
(a)船荷証券の種類船荷証券には,運送品を船積のために受け取った旨の記載のある受取船荷証券と,船積をした旨の記載のある船積船荷証券がある。
船荷証券には外部から認められる運送品の状態が記載され,状態が良好であると記載されたものを無故障船荷証券(cleanB/L)と呼び,何らかの欠陥状態が記載された船荷証券を故障船荷証券(clausedB/L,foulB/L)という。
しかし,故障船荷証券は信用状統一規則上,信用状発行銀行に受理されないため,荷送人からの補償状(letterofindemnity)と引換えに,海上運送人が無故障船荷証券を発行する'慣行がある。
(b)船荷証券の性質と効力船荷証券は,要因証券,非設権証券,処分証券,法律上当然の指図証券,受戻証券の性質を有し,物権的効力,債権的効力についても概ね貨物引換証と同様である(商776条)。
ただし,国際海上運送に関しては,明文で船荷証券の不実記載については海上運送人は善意の船荷証券所持人に対抗できない旨の規定がある(国際海運9条)。
船荷証券は数通(3通が通例)発行される'慣行があり,この場合,陸揚港では1通だけ所持する者もその1通で引渡を請求でき,引渡後は他の複本は効力を失う(商771条.774条,国際海運10条)。
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